実践例
2020年2月に,茨城県南部の落葉樹林帯(標高約400m)1地点にて2,3回のシフティングを行った.シフティングの際は表層の乾燥した落葉を除き,多少分解が進んでいる湿ったリターを用いた.シフティングによって得られた土壌性クモ類を以下に示す.
大小さまざまなクモが含まれているが,スケールバーの大きさに注意してほしい.いずれも体長5㎜以下の微小種である.
この中に,サラグモ科は何種含まれているだろうか?
各種に通し番号をふってみた.確認できた種は合計で7種.
①:ヤギヌマグモ科,②-⑦がサラグモ科である.
①ヤマトヤギヌマグモ Telema nipponica (ヤギヌマグモ科)
サラグモ科ではない.よく見ると眼が6個しかない (サラグモ科の多くは8個).
②タテヤマテナガグモ Microbathyphantes tateyamaensis (サラグモ科)
関東地方では平地から山地にかけて普通.
③カントウケシグモ Nippononeta kantonis (サラグモ科)
④オオイワヤマトコナグモ Paratapinocyba oiwa (サラグモ科)
とても小さい。
⑤ヒロテゴマグモ Pseudomicrargus latitegulatus (サラグモ科)
茨城では山地に普通.
⑥ヤマトマルサラグモ Saaristoa nipponica (サラグモ科)
コデーニッツサラグモに似る.茨城では平地から山地にかけて普通.
⑦オオクマコブヌカグモ Walckenaeria chiyokoae (サラグモ科)
九州で記載された種であり,いまのところ茨城は分布東限.
上記のサラグモ科6種のうち,「サラグモ屋敷」に掲載されていたのはヤマトマルサラグモを除いた5種であった.オオイワヤマトコナグモの種名は掲載されていないが,「サラグモ科112」として紹介される未同定種が本種にあたる.
関東地方でサラグモを採集された方は,「サラグモ屋敷」を訪問することを強くお勧めする.しかし,北海道や四国,九州などのサラグモ相に対応するには不十分だろう.それらの地域で第二,第三のサラグモ屋敷が出現することを期待したい.
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