図鑑にずらりと並べられた生殖器の図をいくら凝視しても,その生き物の容姿を想像するのは難しい.微小サラグモ類であれば尚の事である.
生体写真や生態写真に写り込んだクモの姿は,標本とはまた異なった印象を与える.液浸標本は色素が抜けてしまうため,生体と標本との間で体色が異なることもその一因だろう.生きているクモが放つ独特な艶やかさは,標本では失われてしまうのだ.
2年前,国立科学博物館の小野展嗣博士とクモ研究家の緒方清人氏による「日本産クモ類生態図鑑(東海大出版)」が出版された.写真の鮮明さや857種という掲載種の多さはもちろんのこと,これまでモノクロの生殖器図でしか知らなかった微小サラグモ類の生きた姿が多数収録されていることに感動した.
微小サラグモ類はツルグレン装置などで採集されることが多いため,生きた姿を精力的に撮影されている方は稀である.しかし,微小で人目につきにくいサラグモ類だからこそ,「生きた姿」をとらえる生態写真撮影の意義があると感じる.
幸いなことに,撮影技術に疎い筆者でも,コンデジを用いて手軽にマクロ撮影が可能な現代である.最近では,一眼を使いこなすクモ屋の中から,驚くほど鮮明で美麗な微小サラグモ類の生態写真を撮影する者も出現しつつある.
本記事がきっかけとなり,微小サラグモ類に興味をもつ方,これまで以上に採集や撮影に力を入れる方が一人でも増えれば幸いである.
<先ほどのページで登場した微小サラグモ類のギャラリー>
ヒロテゴマグモ♀
オオイワヤマトコナグモ♀
オオイワヤマトコナグモ♂
カントウケシグモ♀
オオクマコブヌカグモ♀
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